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人の成長、進化に限界はないという確信 人の成長、進化に限界はないという確信

「人は必ず変化する、進化できる」。家庭教師時代も含めて、20年近く“教える”ことに全力を尽くしてきましたが、これは、僕の変節なき信念であり、確信でもあります。成績が伸びないとすれば、原因は生徒さんにあるのではなく、取り巻く環境の問題や指導する教師、コーチの力不足にある。今日までの経験からそう断言できますし、責任は全て我々にあると肝に銘じ、日々指導にあたっています。

確信を持つに至った忘れられない原体験があります。二十歳だった僕が最初に教えた生徒さんのこと。成績が学年最下位という中学2年生で、最初はやる気がないどころか、目も合わせてくれない状態だったんです。なので、まずは“先生色”を排すところから始め、授業には関係のない雑談をしたり、いろんな科目に興味を持ってもらえるようオリジナル教材をつくったり……兄貴的な存在として寄り添ったのです。型にはまらない自由さがよかったのでしょう、彼はみるみる変化し、翌年には学年3番という成績を修めました。

この体験が、僕の入り口です。「伸びない子はいない」という確信と、やる気に火が付くと人はこれだけ変わるのか-という感動。家庭教師や塾の講師を続けてきたなか、こういった経験は度々ありました。大学院で遺伝子解析の研究に取り組み、そのままなら研究者になっていただろう僕が、塾経営の道を選んだのは、人の進化の過程を見る楽しさ、喜びというものを知り得たからです。

徹底的なヒアリングから始めるビスポーク プログラム 徹底的なヒアリングから始めるビスポーク プログラム

学習プログラムは完全個別対応で、現在は講師12名体制で指導にあたっています。学習指導要領や医学部受験に向けた一般的なカリキュラムに依らない「自由な塾」なので、まず重要になるのは最初の面談。生徒さん本人はもちろん、親御さんともじっくり話をすることを大切にしています。まさに「be spoke」。我々がビスポーク・プログラムと呼んでいる所以で、面談には回数や時間制限を設けず、真摯な相互理解に努めています。

T's educationに来られる生徒さんは本当に様々です。「いろんな予備校に行ってもダメだった」という多浪生や、逆に、早い段階から長期プランで医学部を目指したいという中学生。また「働きながら」という社会人などもいて、環境も事情も違う一人ひとりと向き合うことになります。いわばお医者さんのように、個々の状態、これまでの経緯や課題を十分にヒアリングした上でプログラムを組んでいくのです。そして、相性のいい講師陣と組んで一緒に走る。僕自身は専門である化学を担当していますが、カリキュラムについても講師各々がオリジナルのものを持っています。もとより、先述したポリシーを共有している講師陣ですから、その内容や指導技術に対しては全幅の信頼を寄せていますし、実績からしても、今は「間違いないところまできた」という自負があります。

大切なのは、方法論より“在り方” 大切なのは、方法論より“在り方”

加えて、注力しているのはメンターとしての役割を果たすこと。人はどうすればモチベーションを上げられるか、やる気を失わずにいられるか……その支援です。というのは、受験合格はあくまでも一つの通過点であって、本当に大事なのは“その先”だからです。従来の予備校の多くは、少しでも偏差値の高い医学部に合格させることをゴールとし、基本的には、受かったら「はい、さようなら」です。受験まではアウトサイドインの環境ですが、大学進学後はインサイドアウト、主体性を発揮して自分の人生に責任を持ち、自分にとっての本当のゴールに向かって行動しなければなりません。実際、受験で燃え尽きてしまい、せっかく医学部に入っても伸び悩んだり、ビジョンを見失って立ちすくんだりする医学部生は少なくありません。

大切なのは、合格の先にある”ミライ”。だから我々は、生徒たちと「なぜ、医学部に行きたいのか」「医師になったら何をしたいのか」といったビジョンについてよく話をするんです。自分がどう在りたいか、何を大切にするのかと向き合うことは非常に重要で、これは、近年重視されている二次試験・面接対策においても有効です。ここを疎かにして、偏差値という数字だけに一喜一憂していると、受験期間は長期化します。ビジョン実現に対する意識を高め、使命感のようなものや学問に対する好奇心が育まれると、コンディションがいい状態になるのは確かだと思います。

教育にイノベーションを起こすという使命” 教育にイノベーションを起こすという使命”

合格後も生徒さんたちからいろんな相談や連絡を受けるので、最近では、大学の枠を超えたリレーションづくりにも努めています。医学部で勉強一色のトンネル状態にあると、外の情報って入ってこないでしょう。経済の知識やグローバルな視点、激しく変化する世の中の動きなどに対して疎くなってしまう。僕がやりたいのは、視野を広げ、視座を高くするためのリベラルアーツを身につけてもらうための支援。それぞれ大学が違っても横をつなぐ場があれば、様々な情報交換ができるし、広く医学に関しての勉強会なども発足できる。学閥や垣根を超えたコミュニティは将来を豊かにしてくれるし、ひいては日本の医療界を変えられるかもしれない……そう考えているんです。

詰め込み教育の時代はもう終わっているのに、日本の教育改革はうまく進んでいません。何かイノベーションを起こせないか。長期的には、そこに僕なりの使命感を持って臨んでいます。まずは、学ぶことの本当の楽しさと意義を知ってもらうこと。そして、この不確実な時代において、何があっても自分で考え、自分で動ける人を育てること。もとより人間の可能性は無限大です。教育という立場からのサポートを通じて、一人ひとりの持てる可能性を引き出し、進化させることができれば最高、こんなに嬉しいことはありません。

Profile
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高橋昂平(たかはし・こうへい)
1982年、神奈川県生まれ。明治大学農学部で生命科学を学び、その後、東京大学大学院(農学生命科学研究科)に進学。「生命の現象を解明する」のが好きで、まだ黎明期にあったバイオテクノロジーの研究に携わる。一方、大学生の時に始めた家庭教師を皮切りに、院生時代からは大手予備校の講師も務めるなど、数多の生徒の学習支援をしてきた。その「教える楽しさ」から、修士過程を中途退学して起業、2016年に医学部受験塾「T's education」を開設。独自の教育スタイルで合格率100%の実績を挙げる。自らも学び続けることを大事にしており、現在、高い関心を寄せているのは予防医学。大学院時代に培った知識などを生かして、予防医学に関する事業も展開している。